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成長曲線を用いた肥満指導・やせ指導の基礎

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目次

成長曲線を学ぶ前に

子どもの体重管理の基本は成長曲線

乳児及び小児のエネルギー摂取量の過不足のアセスメントには、成長曲線(身体発育曲線)を用いる。体重や身長を計測し、成長曲線(身体発育曲線)のカーブに沿っているか、体重増加が見られず成長曲線から大きく外れていっていないか、成長曲線から大きく外れるような体重増加がないかなど、成長の経過を縦断的に観察する。

「日本人の食事摂取基準(2015年版)策定検討会」 報告書 P33より

 

乳児・小児では該当する性・年齢階級の日本人の身長・体重の分布曲線(成長曲線)を用いる

「日本人の食事摂取基準(2015年版)策定検討会」 報告書 P33より

 

このように、日本人の食事摂取基準より、栄養士が成長曲線を活用することが書かれています。

 

その他、

  • 学校保健安全法施行規則の一部改正等
  • 児童生徒等の健康診断マニュアル 平成27年度改訂

にも成長曲線の活用の重要性が書かれています。

 

個々の子どもの適正なエネルギー摂取量の推定は困難

1日の身体活動量の変動や食べた食事内容の吸収率、ストレスなどで適正なエネルギー摂取量が変化します。

エネルギーの許容範囲は極めて広い

例えば1日何も食べなくても死にません。

お坊さんが絶食修行をする場合もあります。

逆に大食いチャンピオンが食べ過ぎて死ぬこともありません。

エネルギーというものは許容範囲が極めて広いということを知っておく必要があります。

つまり給食の提供エネルギーがEERよりも5kcal低いからといって死ぬことはありませんし、健康被害がでることもありません。

そのため、「提供エネルギー量」で管理するのではなく、「適正な体格」の管理を行うことで評価をします

 

最近では姫路市のこども園「わんずまざー保育園」で給食を適切に提供しなかった事件がありましたが、こちらの事件での発育状態調査(成長曲線等)でも発育に異常はみられませんでした。

 

兵庫県姫路市の私立「わんずまざー保育園」(休止中)で不適切な保育実態が明らかになった問題で、同市は14日、通っていた園児の発育や健康状態に関する調査結果を公表した。6月に調査表を送った園児93人(79世帯)のうち43人(39世帯)の保護者から回答があり、同市は「いずれの園児についても異常は見られなかった」と説明した。

https://www.kobe-np.co.jp/news/shakai/201707/0010371612.shtml

 

エネルギー摂取量の管理は適正な体格の管理はほぼ等しい

身体活動量が一定であるという前提では、

  • 適正な体格が維持されていれば、エネルギー摂取量は適正であると考えてよいです。
  • 肥満、とくに進行性肥満であれば、エネルギー摂取量は過剰であると考えてよいです。
  • やせ、とくに進行性やせであれば、エネルギー摂取量は不足であると考えてよいです。

つまり子どもについては適正な体格が維持されていることの評価は、身長・体重曲線と肥満度曲線に基づいて行います。

間違っても提供エネルギー量とEERで評価をしてはいけません

疑問に思ったら「日本人の食事摂取基準(2015年版)策定検討会」 報告書を見てみましょう。

2010年版から概念が変わっていますのでしっかり目を通しましょう。

児童・生徒の肥満とやせの判定

特定給食施設における栄養管理に関する指導・助言について厚生労働省通達(平成25年9月3日)

健康日本21の推進にあたり、厚生労働省から通達がでています。

 

その中で成長曲線の活用、肥満度の分類などが明記されています。

http://www.pref.ishikawa.lg.jp/kosodate/syokuiku/2018/documents/jyogen.pdf

 

なぜ肥満度が必要なのか

同性同年齢の児童生徒の体重は身長が高いと重く、身長が低いと軽いので、体重の測定値だけでは体重の成長を評価することができません。

体重は身長と比較して評価する必要があるので、そのための指標として肥満度であります。

肥満度=(実測体重 - 標準体重) ÷(標準体重) × 100(%)

標準体重の何%増し、あるいは減を表します。

なぜ、肥満度曲線が必要なのか

同じ肥満度でも肥満度曲線に基づくとその対応はまったく異なるからです。

肥満度25%場合

A 安定した肥満

6歳から現在の12歳までずっと肥満度25%でキープされていますので、肥満は進行していません

B 減量中の肥満

10歳の肥満度35%をピークに減量がすすんで、25%に改善されています

C 進行中の肥満

6歳のときの肥満度3%から年々肥満が進行し、現在は25%になっています

肥満度-15%の場合

A 安定したやせぎみ

肥満度-15%をずっと推移しており、やせは進行していません

B 増量中のやせ

肥満度-25%から改善されて肥満度-15%に増えています。

C 進行中のやせ

肥満度10%から年々減少しており、現在-15%に進行しています

肥満度の目標は0?

肥満度は0にする必要はありません

目的は肥満度を0(標準体重)にするのではなく、肥満症ややせすぎによる健康被害を防ぐことです。

肥満指導の目標は食に関する指導の手引に書いている!

食に関する指導の手引に肥満指導の目標が記述されているのはご存知ですか?

 

いたずらに理想体重を目標にすると、減量意欲を失わせるので、最初は指導時の実測体重の5%減量を目安にし、次は10%減量を目安にする。

これが達成できたら指導はほぼ成功したと考えてよい。

発育時には身長が伸びるので、最低限の目標達成は、現在の体重より増えないことである。

体重が増えなければ、必ず肥満度は解消する。

食に関する指導の手引-第1次改訂版- P250

第6章 個別的な相談指導の進め方 6.具体的な指導方法 (2)肥満傾向にある児童生徒 より

 

つまり100kgの児童がいるとすると

最低限の目標 体重維持

次の目標 5%減 =5kg減 = 95kg

次の目標 10%減 =10kg減 = 90kg

となります。

 

なぜ、身長・体重成長曲線が必要なのか

同じ身長でも身長・体重成長曲線に基づくとその対応がまったく異なるからです

成長曲線とは

成長の変化が最もわかりやすいのは身長と体重です。

身長の伸びと体重の増加には規則性があります

この身長の伸びと体重の増加の規則性を具体的に示したものが身長体重成長曲線です。

成長曲線基準図と、肥満度曲線基準図

パーセンタイルで表しています。

paer(割合) cent(100) ile(位) で日本語では百分位といいます。

身長が3パーセンタイルということは、同性同年齢の人が100人並んでいたら、低い方から3番目の位置ということです。

身長の一番下に-2.5SDがあるのは、極端な低身長を判定するためです。

この線より下に身長があったり、触りそうな児童生徒は医療機関受診を勧めましょう

 

肥満度により、肥満・やせの分類ができます。

  • 50以上:高度肥満
  • 30%以上50%未満:中等度肥満
  • 20%以上30%未満軽度肥満
  • -15%以下-20%超:やせぎみ
  • -20%以下-30%超:やせ
  • -30%以下:高度やせ

成長曲線に基づく子どもの食生活支援区分を行う

まず、対象となるすべての子どもについて、身長・体重成長曲線と肥満度曲線を作成します

子どもを肥満群、やせ群、及び経過観察群にわける

肥満群

軽度肥満以上でも標準でも過去の最小肥満度と比較して現在の肥満度が20%以上増加している子どもを抽出します。これを肥満群といいます。

  • 肥満度20%以上
  • 過去の最小肥満度より20%以上増加 ←NEW

やせ群

やせでも標準でも、過去の最大肥満度と比較して現在の肥満度が20%以上減少している子どもを抽出します。これをやせ群といいます。

  • 肥満度-30%以下
  • 現在の肥満度が最大肥満度より20%以上減少 ←NEW

経過観察群

上記以外に該当しない子ども抽出します。これを経過観察群といいます。

  • 肥満度20%未満 -30超
  • 現在の肥満度の増加量が過去の最小肥満度20%を超えない
  • 現在の肥満度の減少量が最大肥満度より20%を超えない

病気が原因である肥満・やせ鑑別するために身長・体重成長曲線を見る

成長曲線と肥満度曲線に基づく肥満の分類

A 体質性肥満
B 単純性肥満
C 症候性肥満

身長が伸びない肥満は病気が原因の場合があります

Cushing症候群、橋本病など

なぜ子どもの食生活支援に身長・体重成長曲線と肥満度曲線が必要なのか

病気が原因の肥満は早期に発見できれば、早期に脳腫瘍等を除き、治療ができるからです

病気が原因の肥満を早期に発見するためには、身長・体重成長曲線と肥満度曲線に基づく以外にありません。

成長曲線に基づくやせの分類

A 体質的やせ
B 病的やせ
C 重大な病気の可能性が高いやせ

 

成長異常判定の1~10の分類

1 身長の最新値が97パーセンタイル以上

身長が統計学的にみると異常に高いが、病気が原因であることはほとんどない。

2 過去の身長の最小値に比べて最新値が1Zスコア以上大きい

思春期早発症などの病的状態が原因であると考えられるため、医学的対応が必要である。

3 身長の最新値が3パーセンタイル以下

身長が統計学的にみると異常に低いが、病気が原因であることはほとんどない。

4 過去の身長の最大値に比べて最新値が1Zスコア以上小さい

甲状腺機能低下症などの病的状態が原因であると考えられるので、医学的対応が必要である。

5 身長の最新値が-2.5Zスコア以下

身長が極端に低いもので、病気が原因である可能性が高い。医学的対応が必要である。

6 肥満度の最新値が20%以上

必ずしも単純性肥満とは限らず、身長の伸びが異常に小さい場合は病的(症候性)肥満と考えて対応する

必要がある。

7 過去の肥満度の最小値に比べて最新値が20%以上大きい

進行性の肥満。

8 肥満度の最新値が-20%以下

やせ。

9 過去の肥満度の最大値に比べて最新値が20%以上小さい

進行性のやせ。

10 1から9のいずれの条件も満たさない。

現時点では適正範囲の成長であるが、これは将来を保証するものではない

 

栄養教諭は特に6~9群の指導を中心に行う

6、7群 肥満群

6群 肥満度の最新値が20%以上

7群 過去の肥満度の最小値に比べて最新値が20%以上大きい

肥満度が50%を超える高度肥満はメタボリック・シンドロームや肥満症である可能性が高いので、食生活支援については医師の指示を受けましょう。

7群の中で軽度、及び中等度の肥満を食生活支援の対象にしましょう。

4群(過去の身長の最大値に比べて最新値が1Zスコア以上小さい)と重複する者は症候性肥満なので、医療機関の受診を勧めましょう。

 

8、9群 やせ群

8群 肥満度の最新値が-20%以下

9群 過去の肥満度の最大値に比べて最新値が20%以上小さい

 

肥満度が-30%以下の高度やせと、肥満度-20%以下の9群の食生活支援については医師の指示を受けましょう。

 

肥満とやせの指導・支援は本質的に異なる

肥満

A 体質性肥満

基本的に経過観察

高度肥満と、7群(過去の肥満度の最小値に比べて最新値が20%以上大きい)と6群(肥満度の最新値が20%以上)が重複する場合は経過観察ではなく、何らかの対応が必要。

 

B 単純性肥満

単純性肥満として学校で対応する

栄養教諭が積極的に関与する

6群(肥満度の最新値が20%以上)+7群(過去の肥満度の最小値に比べて最新値が20%以上大きい)

C 症候性肥満

医学的対応が必要。

医師の指示をうける。

医療機関の受診をすすめる。

学校医に相談する。

6群(肥満度の最新値が20%以上)+7群(過去の肥満度の最小値に比べて最新値が20%以上大きい)+4群(過去の身長の最大値に比べて最新値が1Zスコア以上小さい)

 

やせ

A 体質性やせ

経過観察

ただし高度やせの場合、または9群(過去の肥満度の最大値に比べて最新値が20%以上小さい)と8群(肥満度の最新値が-20%以下)が重複する場合は対応が必要。

B 病的やせ

病的原因として医学的対応が必要。

医師の指示をうける。

医療機関の受診をすすめる。

学校医に相談する。

8群(肥満度の最新値が-20%以下)+9群(過去の肥満度の最大値に比べて最新値が20%以上小さい)

 

C 重大な病気の可能性が高いやせ

重大な病的原因として医学的対応が必要。

医師の指示をうける。

医療機関の受診をすすめる。

学校医に相談する。

8群(肥満度の最新値が-20%以下)+9群(過去の肥満度の最大値に比べて最新値が20%以上小さい)

栄養教諭が積極的に対応するのはBの単純性肥満

・進行性高度肥満

・進行性中等度肥満

・進行性軽度肥満

・肥満と判定はされないが対応が必要

 

どれも肥満度曲線が右肩上がりなのでわかりやすいです。

7群(過去の肥満度の最小値に比べて最新値が20%以上大きい)はエネルギー摂取量が過剰であることが多いです。

 

肥満指導の難易度

肥満の原因・保護者理解などによる難易度

難易度は大きくなるほど対応が難しくなります。

保護者の理解 食事の問題 運動の問題 難易度
あり なし あり なし あり なし
肥満体質なし 1
2
3
4
9
10
11
12
肥満体質あり 5
6
7
8
13
14
15
16

所見者全員を対象に指導するのではなく、まずは改善の効果が出やすいところから指導を始めることが重要です

その後、指導効果がみられてきたら難易度の高い対象に広げていきましょう。

つまり表でみると、保護者の理解がある事例から解決していくことが大事です。

保護者の理解がない場合はまずは1年以上かけてラポールの形成が必要なので、2~4年必要になります。

 

成長曲線からみた難易度

栄養教諭が積極的期に指導を行うのは7群(過去の肥満度の最小値に比べて最新値が20%以上大きい)です。

難易度は大きくなるほど対応が難しくなります

難易度3:進行性中等度肥満

難易度2:進行性軽度肥満

難易度1:肥満と判定されないが肥満度が増加中

 

肥満に対する支援指導効果の判定(評価)

肥満に対する支援指導効果の判定(評価)は以下の4点で行います。

・進行性高度・中等度・軽度肥満から肥満度の進行が止まる

・高度肥満から中等度肥満へ移行する

・中等度肥満から軽度肥満へ移行する

・軽度肥満から適正な肥満度に移行する

 

知的障害を伴う肥満への対応

知的障害者は生活習慣病(糖尿病、脳卒中、心臓病、脂質代謝異常症、高血圧、肥満など)になる割合が健康な人や他の障害がある人よりも高いと考えられています。

 

知的障害をもつ子どもは、健康に対する自己管理能力が高くなく、食生活や運動習慣に気をつけることが難しいです。

その結果、肥満傾向の割合が高くなり、生活習慣病のリスクが高くなっていると考えられます。

https://www.nise.go.jp/kenshuka/josa/kankobutsu/pub_b/b-214/b-214_2.pdf

 

知的障害のみで他に障害が見られない場合は単純性肥満の可能性が高い

知的障害と肥満を伴う先天性疾患が同時にある場合

  • Prader-Wili症候群
  • Down症候群
  • Laurence-Moon-Bardet-Biedl症候群

肥満の他に極端な低身長、性発達遅延などを伴うことが多いです。

共通して肥満を改善することが非常に困難です。

肥満が原因で健康障害がある場合(肥満症)は、その健康障害に対する治療が必要です。

なにより保護者の心身への負担を軽減する必要があります。

 

参考文献

食に関する指導の手引-第1次改訂版-(平成22年3月)

http://www.mext.go.jp/a_menu/sports/syokuiku/1292952.htm

 

児童生徒等の健康診断マニュアル平成27年度改訂

http://www.gakkohoken.jp/books/archives/187

 

学校保健ポータルサイト

http://www.gakkohoken.jp/special/archives/category/schoolhealth/schoolhealth1st

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