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牛乳反対派「アンチミルク」に答える解説集

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子どもや保護者には牛乳は健康に悪いと思っている人が一定数います。

飲まないだけなら個人の自由ですが、大きな声で回りに広げられると影響を無視できません。

牛乳を飲むことが正しいとはいいきれませんが、立場上反対はしづらいので、知識を頭に入れておくか、いつでも調べられるようにしておく必要があります。

目次

「骨を弱くする」に答える編

そもそも牛乳は高カルシウム食品ではない

1食分の摂取量と吸収率を考慮すれば、牛乳の優秀さは明らかです。

カルシウムは、牛乳・乳製品のほか、ししゃもやしらすなど骨まで食べられる小魚、殻ごと食べるさくらえびや干しえび、大豆、葉物野菜などに多く含まれています。

これらの食品を100gあたりの含有量で単純比較すれば、牛乳より多くのカルシウムを含む食材はたくさんあるでしょう。

ただ、このような比較は食材の実質的な1食分の摂取量や体内での吸収率を加味しておらず、現実的とはいえません。

1食分に換算し、食べたカルシウムのうちどの程度が小腸から吸収され体内に入るかを示す吸収率まで考慮すると、牛乳は非常に優秀な高カルシウム食品だということがわかります。

加えて、栄養素密度が高く(100kcalあたりの栄養素量が豊富)、調理をしなくてよいので手軽に摂取できることも、他のカルシウム源食品と比較して牛乳のすぐれた点です。

ところが、「牛乳中のカルシウムは、いっしょに含まれるたんぱく質や脂質、リンなどにじゃまをされて本当は吸収が悪い」という説があとを絶たないようです。

しかし、論より証拠。カルシウムを含むいろいろな食品について、実際に吸収率を調べた報告があります。それによれば、数ある食品の中でも牛乳はカルシウムの吸収性の面で、特にすぐれた食品であることがわかっています。

なお、カルシウムやマグネシウムなどの金属元素は、小腸で吸収されます。

このとき、胃の中は酸性ですが、小腸では分泌される消化液などで環境が一転し、アルカリ性に変わっていきます。

すると、ナトリウムやカリウムなどのアルカリ金属を除く金属元素一般にいえることですが、アルカリ環境下においてこれらは不溶性の塩を形成するため、遊離のイオンの状態で存在する率が低くなってしまいます。このため、特別のメカニズムがない限り吸収効率は低くなり、吸収率が30%以下ということも普通なのです。

こうした中で牛乳中のカルシウムの吸収率が高いのは、吸収を助ける巧妙なメカニズムが存在するからです。

牛乳にはリンが多く含まれており、牛乳摂取はかえってカルシウムを排出する

骨の主成分はリン酸カルシウム。牛乳中のCa/P比は、骨を形成するうえで合理的な値です。

「リンの過剰摂取がカルシウムの排出につながる」「牛乳は確かにカルシウムを多く含むが、リンもたくさん含まれているので、牛乳を飲むとかえってカルシウムの排出につながる」といった趣旨の言説がなされることがあります。

リンの排出にカルシウムが付随するというメカニズムが理由のようですが、この点だけに着目するのは、栄養摂取の観点からすると“木を見て森を見ない”議論と言わざるをえません。

カルシウム(Ca)とリン(P)の1日の摂取量の目安は、年齢・性別で異なりますが、成人女性でCa:650mg、P:800mgとされています。

したがって、少なくともカルシウムに対するリンの比率がこれを超えない範囲において、リンが多く含まれているから摂取に意味がない、と考えるのは誤りです。

実際のところ、牛乳1杯200mL中に含まれるカルシウムとリンはCa:227mg、P:192mgですので、少なくとも牛乳の飲用だけでこの比率を超えることはありえません。

一方で、1日のリンの耐容上限量は3000mgとされていますから、牛乳の常識的な量の摂取でリンを過剰摂取するおそれもありません。

リンは、食品添加物としての使用も多いことから、近年、加工食品の消費量増加とともに、その摂取量の増加が懸念されています。

リンの摂取量については、こうした側面にこそ注意を払うべきでしょう。

牛乳中にリンが一定量含まれているのは、骨の主成分がリン酸カルシウムであることを思えば、納得がいくことでしょう。

事実、牛乳中のカルシウムとリンの含有比率は、骨を形成するうえでとても合理的な値になっています。

牛乳にはカルシウムの吸収を助ける巧妙なメカニズムが存在しています。

ヒトの赤ちゃんも同じですが、子牛が骨を形成するためには、なんらかの形でリン酸カルシウムを構成する成分が大量に供給されなければなりません。

しかし、リン酸カルシウムは水に溶けません。

一方、子牛にとって栄養の供給源は、母牛からのミルクがすべてです。

では、どうやって必要成分の供給という目的を達成しているのでしょうか?

その秘密が、牛乳のたんぱく質の8割を占めるカゼインというたんぱく質です。

たんぱく質はアミノ酸が多数つながった構造をしていますが、カゼインにはその配列の中でセリンというアミノ酸が多数集まっているところがあります。

セリンはリン酸が結合できる構造になっていて、これに結合することによって、カルシウムはカゼインに安定して保持されるようになっています。

つまり牛乳中に存在する全カルシウムのうち、約3分の2は遊離のカルシウムイオンとしてではなく、上記のようにリン酸化されたカゼインに結合・保持されて存在しています。

そのうえでカゼインは、「カゼインミセル」を形成します。

カゼインミセルは、サブミセル(さまざまな種類のカゼインの集合体)とよばれる粒子をリン酸カルシウムがつなぎ合わせ、それを親水性のκカゼインを多く含むサブミセルで囲むモデルが考えられています。

外側を親水性のκカゼインで包み込むことで、カゼインミセルは液体中に浮かぶことができるようになります。

こうして、たんぱく質、カルシウム、リンといった重要な栄養素を析出(固体化)・沈殿させることなく、牛乳中に安定に分散して存在させることができ、大量に、確実に、子牛の体内に届けることに成功しているのです。

カゼインミセルは、胃に入ると胃酸によっていったん固まり、時間をかけて消化されます。

リン酸カルシウムもこのときいったんリン酸とカルシウムがそれぞれイオンの形にまで分解されます。

なお、カゼインは、小腸でのカルシウムの吸収を助けるはたらきも担っています。

胃でイオン化されたカルシウムは、一部が小腸上部で吸収されますが、大部分は小腸下部まで降りてきます。

このとき、下部にいくほどpHが酸性から弱アルカリ性に変わるため、通常ならカルシウムは再びリン酸と結合し、吸収されにくくなってしまいます。

しかし、カゼインに特徴的なのが、消化が進む過程で生成するカゼインホスホペプチド(CPP)です。

CPPは、上述の「カゼインにはセリンというアミノ酸が多数集まっているところがあり、それらセリンはリン酸化されている」部分が、バラバラにならずペプチドとして切り出されて生成します。

しかし、カルシウムをよく捕まえる能力はそのまま維持しており、腸管からのカルシウムの吸収を助けることが解明されているのです(ペプチドごと吸収されるのではないかという説もあります)。

カルシウムを含む食品は多数ありますが、牛乳中のカルシウムが特に吸収効率が高いのは、こうしたメカニズムの存在によると考えられています。

牛乳のナトリウムが、体内のカルシウムを排出する

牛乳を飲んでカルシウムが増えることはあっても減ることはありません。

塩分(ナトリウム)を摂りすぎると、体内のバランス機構がはたらいて尿などへのナトリウム排泄量が増加します。

このとき、カルシウムの排泄量も増えることがわかっており、「概算してナトリウム2300mgが排泄されるにつれ、カルシウムの摂取量に関係なく、約20~60mgのカルシウムが尿中に排泄される」との文献があります。

では、牛乳を飲むと、牛乳に含まれるナトリウムのせいで体内のカルシウム量は減ってしまうのでしょうか。

その答えは「No」です。そもそも、牛乳100g中に含まれるナトリウム量はわずか41mg(食塩相当量0.1g)しかありません。

むしろ日本人が注意すべきは、食事全体でのナトリウム摂取量の多さでしょう。

「平成28年 国民健康・栄養調査」によれば、日本人の1日あたりのナトリウム摂取量の平均値は、20歳以上で男性4251mg(食塩相当量10.8g)、女性3610mg(同9.2g)。

減少を続けてはいるものの、「健康日本21(第二次)」で定める目標値約3150mg(同8g)にはまだまだ遠い状態です。

まずは食事全体で塩分を減らしていくことを心がけ、同時に、ナトリウムの排泄にはたらくカリウムを積極的に摂るなど、栄養バランスのよい食事を心がけましょう。

そして大切なのが、カルシウムの補給です。

カルシウムは、99%が骨や歯に存在しますが、残り1%は血液中や筋肉に存在し、血液の凝固や、筋肉・血管壁などの収縮、神経の信号伝達など、数多くの重要な生命活動に直接かかわっています。

血液中のカルシウム濃度はほぼ一定に保たれ、カルシウム摂取が多ければ骨に貯蔵され(骨形成)、不足すれば骨から取り出して使用しています(骨吸収)。

血液中のカルシウム濃度が保たれていると骨から溶け出るカルシウム量は少なくなり、骨への蓄積が増えます。

カルシウム補給は、体の基本的な機能の維持と、カルシウムの貯蔵庫である骨を守ることにつながるのです。

牛乳1本(200mL)に含まれるカルシウム量は227mg。

吸収率を40%とすると約90mgのカルシウムが体内に取り込まれることになります。

ナトリウム排泄によって失われる量を補い、さらに充分な量を得るためにも、牛乳・乳製品は毎日の食生活に積極的に取り入れたい食品なのです。

牛乳を飲みすぎると骨粗しょう症になる

通常の摂取量で骨粗しょう症になることはありません。バランスのよい食生活にも気をつけて。

牛乳の飲みすぎが「脱灰(だっかい)」を促進、骨を弱くし、骨粗しょう症に至らせるという説があります。

脱灰とは、骨の「灰分(かいぶん)」(カルシウムやマグネシウム、ナトリウムなどのミネラル)が失われることをいいます。

これらの説で牛乳が脱灰を起こさせる原因としていわれているのが、たんぱく質の過剰摂取、またはマグネシウム不足です。

たんぱく質の過剰摂取

脱灰を起こすほどのたんぱく質の過剰摂取、ひいては牛乳の摂取量とは、どれくらいなのでしょうか。

「日本人の食事摂取基準(2015年版)」は、たんぱく質の過剰摂取について、「総エネルギーの 20%を超えた場合の安全性は確認できない」と注意喚起した報告を紹介しています。

これに基づけば、たとえば20歳以上の日本人男性の摂取エネルギーの平均は2097 kcal/日※1であることから、その20%(約419kcal、たんぱく質に換算すると約105g)を牛乳のたんぱく質で摂ったとすると、牛乳を約3084mLも飲むことになります(牛乳のたんぱく質含量は6.8 g/200mL)。

つまり通常の食生活をしていれば、牛乳の摂取でたんぱく質の過剰摂取による健康障害を引き起こすことは、まずないと考えられます。

マグネシウム不足

マグネシウムは、エネルギー代謝をはじめ、生命を維持していくうえできわめて重要な生理作用と密接に関連するミネラルです。そのため

常に取り出せるようカルシウムと同じく骨に貯蔵されており、不足すると骨を溶かして補われます。

牛乳100g中には、カルシウム110mg、マグネシウム10mgが含まれています。

マグネシウムとカルシウムの摂取量の割合は1:2が理想的とされており、カルシウムに比べてマグネシウムが10分の1以下と少ないことが「マグネシウム不足を招いて脱灰につながる」説を招いているようですが、心配には及びません。

私たちは毎日の食事において、さまざまな食品から栄養素を摂取しています。

通常の食事をしている健康な人がマグネシウム不足に陥ることは、まずありません。

牛乳摂取量が多い世界四大酪農国で骨折や骨粗しょう症が多い。死亡率が高い

牛乳が原因ではありません。

カルシウムは生命維持に欠かせないため、不足すると骨からどんどん溶け出して使われます。

この状態が続くと、骨がスカスカになって、骨折しやすくなります。

これが骨粗しょう症です。

ただし、骨粗しょう症は多くの要因が関与して発症する疾患であり、遺伝要因と生活習慣が大きく影響します。

骨粗しょう症の危険因子には、加齢・性・人種などの除去できないものと、カルシウム不足などの対策が可能なものとがあります。

世界四大酪農国とは、牛乳・乳製品の生産・消費が多いアメリカ、スウェーデン、デンマーク、フィンランドを指しますが、これらの国々の人々が牛乳を摂りすぎて骨粗しょう症になったという研究報告はありません。

北欧は他国と比べて骨折が多い傾向にありますが、その原因は身長の高さ(重心が高い)や日照時間の短さ(ビタミンD不足)など、複合的なものとされています。

牛乳をたくさん飲むことで、骨粗しょう症になったり、骨折しやすくなることはありません。

逆に、「牛乳をたくさん飲むことはカルシウムの摂取につながり、骨粗しょう症の予防に有効である」という研究結果は、世界中から報告されています。

日本でも、中高生の男女約6000人を対象に行ったフィールドワークで、牛乳の摂取量が多いほど骨量が多いことが報告されています。

また、牛乳・乳製品の摂取を増やすと、中高年期では閉経後の骨量減少が抑制されることも報告されています。

なお、この説でよく引き合いに出されるのが2014年秋に報告されたスウェーデンのコホート研究の論文です。

「牛乳摂取と死亡率、女性の骨折との間に相関が見出された」とする内容で、国内外のメディアでも取り上げられ注目を集めました。

しかし、この論文の内容については、後に、著者のうち中心になっていた2名の教授を含むグループが、他の類似疫学研究を含めてのメタ解析を行ったところ、そうした関連性は結論できなかったと報告しています。

さらにその後、他のグループからも上記のスウェーデンの論文を含む29件の前向きコホート研究のシステマティック・レビューが報告されており、その中では、スウェーデン論文の異質性の高さが指摘されています(メタ解析、システマティック・レビューは現在最も信頼度が高いとされる論文の手法)。

「薬剤・ホルモン」に答える編

牛乳には、抗生物質や成長ホルモンが含まれている

抗生物質が残留する期間、生乳は出荷できません。成長ホルモンは投与が禁止されています。

市場に出まわっている牛乳に抗生物質が混入していることはありません。

抗生物質の投与については「乳及び乳製品の成分規格等に関する省令」(乳等省令)という法律で厳しく規制されており、乳房炎や外傷などの治療の場合のみに限られています。

投与後はその影響が消失するまで生乳は出荷できません。

飼料への添加も禁止で、輸入飼料を使う場合も国の厳格な検査をパスしたものだけを与えます。

さらに生乳は、酪農家からの出荷時と乳業会社での受け入れ時に、二重に検査が行われます。

特に抗生物質の検査は厳しく、万が一残留していた場合は、集められた生乳はすべて廃棄処分されます。

乳業会社での厳密な検査にパスした生乳だけが、原料乳として工場のタンクに受け入れられるのです。

東京都が毎年、都内に流通する農畜水産物を対象に行っている検査をみても、牛乳から農薬や動物用医薬品等(抗菌性物質、ホルモン剤、駆虫剤など)は検出されていません。

なお、成長ホルモンは日本では禁止されているため、検出されたことはありません。

牛乳には女性ホルモン作用がある/牛乳が乳がんの原因になる

牛乳中の女性ホルモンはごく微量で、健康に影響はありません。乳がんの発症リスクは心配に及びません。

牛乳は妊娠した牛からも搾乳されるため、女性ホルモンが含まれていることが知られています。

これについて、ドイツ連邦リスク評価研究所(BfR)は、「1日200~250gの乳(ヨーグルトを含む)により摂取されるホルモン量は、ヒトが体内で自己合成するよりかなり低い」という見解を示しています。

国内でも過去に、内閣府食品安全委員会が100種類の市販牛乳を対象とした大々的な調査を実施。

その結果を平成16年3月に公表しており、食品安全委員会のホームページで閲覧可能です。

それによると、遊離体のエストロンはほぼ全検体から検出され、ほかに抱合体のエストロン、17α-エストラジオールが検出されていますが、その量はきわめて微量であることがわかっています。

なお、エストロゲンは、もともと男性・女性ともに常にある一定濃度で血中に存在しており、正常値あるいは基準値が示されています。

医療(ホルモン療法)においてヒトに経口的にエストロゲンを投与した場合でも、摂取されたエストロゲンは腸で吸収されるものの、そのほとんどは全身にまわる前に肝臓で分解されてしまい、エストロゲンそのままの投与は、その効果が非常に低いことが知られています。

食品安全委員会の調査結果をもとに、牛乳を一度に500 mL飲み、仮にその中に含まれるエストロゲンがすべて分解されることなく血中に移行したとして血中濃度の上昇寄与を計算してみても、正常範囲にほとんど影響を与えない程度の量なのです。

また、牛乳中のエストロゲン(女性ホルモン)作用を仲介する物質が、乳がんの原因になるという説があります。

乳がんは女性ホルモンとの関連性が高いがんとされています。

しかし、上述のように女性ホルモンは男女ともに血中には一定のレベルで存在しており、牛乳中に女性ホルモンが含まれるといっても、常識的な飲用が血中レベルに影響を与えることはありません。

牛乳・乳製品の摂取習慣と乳がん発症との関連性を調べた疫学研究は、過去に多数報告されています。

対象者総計100万人以上に上る18のコホート研究のメタ解析も報告され、それによれば牛乳摂取は相対危険度0.91(95%信頼区間:0.80-1.02)。

有意に予防的とまでは言えませんが、牛乳摂取習慣の乳がんの発症リスクについては全く心配する必要がないとの結果が示されています。

「体に悪い」に答える編

牛乳のたんぱく質は消化が悪く、未消化物が腸にたまって炎症を起こす

牛乳のたんぱく質は、とても消化が良く、栄養的にも良質なアミノ酸源です。

牛乳は非常に消化の良い食品です。食べたたんぱく質がどれだけ消化・吸収されて体内に取り込まれたかを測る「生物価」をみても、牛乳は特にすぐれていることがわかります。

ところが、牛乳のたんぱく質は消化が悪い、飲み続けると未消化物がたまり腸に炎症を起こすなど、事実に反する主張があります。

牛乳のたんぱく質は胃の中で固まるので消化が悪い?

牛乳に含まれるたんぱく質のうち約80%を占めるカゼインは、胃に入ると胃酸によりいったん固まり、「カード」とよばれるヨーグルト状になります。

この「凝集」こそ、牛乳の消化が良い理由です。

凝集により、胃での滞留時間は長くなります。

そして、胃から分泌されるたんぱく質分解酵素ペプシンが、軟らかくすき間が多いカードのすみずみまで入り込み、ゆっくり確実に消化・分解されるのです。

一方、カゼイン以外のたんぱく質(ホエイたんぱく質)は胃酸では凝集しません。

その他の食塊とともにそのまま胃を出て、小腸ですばやく消化・吸収されることがわかっています。

殺菌の工程により酵素が死ぬのでヒトには消化できない?

この説の間違いは、牛乳の酵素がないと、ヒトは牛乳のたんぱく質を消化できないとする点にあります。

牛乳中の酵素はもともと微量。

しかも分娩時における子牛への免疫付与に関するものと考えられ、日ごとに減少していくため通常の牛乳にはほとんど含まれておらず、栄養学的な意味はありません。

何よりヒトの消化酵素は充分に牛乳のたんぱく質をアミノ酸にまで分解し、栄養として利用できます。

加熱によってたんぱく質が変性するので消化できない?

一般的に、たんぱく質は加熱によって「変性」しますが、むしろ、加熱して変性させると消化酵素の作用を受けやすくなり、消化・吸収されやすくなります。

調理で火を通すのはそのためでもあります。

生乳を殺菌する際の加熱は120~150℃ 1~3秒が一般的ですが、この程度での変性はほとんどありません。

しかも、たんぱく質(アミノ酸源)としての優秀さは、上に示した高い「生物価」(消化吸収性)と「アミノ酸価」(必須アミノ酸含有組成)で証明されています。

アミノ酸はバランスよく摂らないと栄養的に有効利用されませんが、牛乳のたんぱく質は、必須アミノ酸のすべてがヒトの必要量を充分に満たす、きわめて良質なものです。

牛乳の乳脂肪は、加工工程で酸化している

乳脂肪は、ホモゲナイズや殺菌では酸化しません。

酸化とは、物質が酸素と反応する化学変化です。たとえば、金属が錆びたり、揚げ油を何度も加熱使用するうちに褐色に変化してくるのも,酸化反応の一つです。

牛乳に対しては、「ホモゲナイズ(均質化)や殺菌などの加工工程によって乳脂肪が『過酸化脂質』(酸化した脂質)となり、体をサビつかせる(悪い影響を及ぼす)」という声があります。

しかし、実際には、以下の理由により、乳脂肪が酸化することはありません。

外気に触れない製造工程

牛乳は搾乳から充填まですべての工程で冷却され、ほとんど空気に触れることなく衛生的に作られています。

酸化が起こるためには酸素が必要ですが、ホモゲナイズや殺菌といった加工工程も外気に直接触れない密閉装置で行われるため、酸素が牛乳に溶け込むのは難しく、乳脂肪が酸化される可能性はほとんどありません。

膜で守られた乳脂肪

乳脂肪は、乳たんぱく質の薄い膜(脂肪球膜)に包まれて、酸化されにくい形態になっています。

しかも、牛乳中に酸素はほとんど含まれていないため(酸素濃度6ppm〈100万分の6〉)、乳脂肪が酸素と接触する機会はほぼありません。

酸化しやすい不飽和脂肪酸が少ない

脂肪の酸化のしやすさは、構造に二重結合(不飽和結合)がどれくらいあるかによります。

牛乳の乳脂肪には、二重結合が多く酸化しやすい「不飽和脂肪酸」が少なく(約30%)、大豆油(約84%)やとうもろこし油(約86%)と比べると酸化されにくいことがわかります。

ホモゲナイズの工程は、脂肪球の大きさを細かく均一にすることで乳脂肪分の分離を防ぐとともに、牛乳の消化・吸収の良さにつながっています。

また、現在の主流である超高温瞬間殺菌(120~150℃で1~3秒程度)では、殺菌の工程により脂肪の酸化が進むこともありません。

生乳と紙パック入り牛乳について乳脂肪の酸化の程度を測定した検査では、両者にまったく差はなく、どちらも酸化は認められませんでした。

牛乳のたんぱく質は「異種たんぱく質」であり、アレルギーを引き起こす

異種でありアレルゲンとなりうるのは、牛乳も他のたんぱく質も同じです。

ここでいう「異種たんぱく質」というのは「自分(のたんぱく質)とは異なるたんぱく質」という意味でしょう。

その意味では、牛乳のたんぱく質は確かに「異種たんぱく質」です。

ただ、ヒトは自分に必要な独自のたんぱく質をアミノ酸を原料に合成しますが、原料のアミノ酸は外界からたんぱく質として摂取し、消化してアミノ酸にまでバラバラに分解して吸収利用します。

この際、ヒトにとって摂取可能な「同種たんぱく質」といえるものは母乳ぐらいしかありません。

ヒトは生きていくために必要なアミノ酸源として、「異種たんぱく質」を摂取せざるをえないのです。

「異種たんぱく質」は、通常は分解されないまま体内に取り込まれることがないようになっているのですが、そのシステムが不完全でそのまま体内に取り込まれてしまうと、生体はこれを異物とみなしアレルギー反応を起こします。

したがって、アレルギーについては、牛乳に限らず、たんぱく質を含む食品はすべて食物アレルギーを起こす原因(アレルゲン)となりえます。

このため、症例数が多いものや症状が重篤で生命に関わるもの7品目については、「特定原材料」として法令で表示が義務づけられています。

また、「特定原材料に準ずるもの」20品目については、可能な限り表示するよう推奨されています。

牛乳アレルギーは、消化機能と免疫機能がまだ未熟な乳幼児において、アミノ酸にまで分解されずに残った牛乳たんぱく質の一部が体内に取り込まれてアレルゲンとなり、それに対する抗体ができることにより発症します。

卵・小麦とともに、1歳前後に最も多く認められる小児型の食物アレルギーの主要アレルゲンとされています。

なお、小児型の特徴として、大部分の症例で、年月の差はあっても耐性の獲得とともに自然によくなることが報告されています(3歳までに50%、学童までに80~90%)。

アレルギーが疑われる場合は医療機関を受診し、医師の診断のもと、指示に従って対応しましょう

牛乳・乳製品が動脈硬化を招く

最新の研究により、牛乳・乳製品は「動脈硬化を予防する」という結果がでています。

動脈硬化は進行すると、脳卒中や心筋梗塞などを引き起こします。

これらの循環器疾患は日本人の死因の上位を占め、寝たきりや介護が必要な状態を招く大きな要因ともなっています。

動脈硬化を進行させるのは、動物性脂肪(飽和脂肪酸)の多い食生活、過度の飲酒、喫煙、運動不足などで、やがて肥満、高血圧や糖尿病、脂質異常症などの生活習慣病を発症することにより加速します。

動物性脂肪に多く含まれる飽和脂肪酸には、LDLコレステロールを増やす作用が認められています。

増えすぎたLDLコレステロールは、悪玉コレステロールとよばれ、動脈硬化を進行させる一因になります。

このことから、乳脂肪中に飽和脂肪酸を比較的多く含む牛乳の摂取は、動脈硬化につながるという説があります。

しかし、牛乳は動脈硬化の原因にならないことが、日本人を対象とした研究で示されています。

研究では、牛乳摂取後にLDLコレステロール値は上昇しましたが、血中の余ったLDLコレステロールを回収してまわる善玉コレステロール(HDLコレステロール)も増加。

差し引き「影響なし」となることが判明したのです。

さらに、近年、動物性脂肪の摂取量が多い欧米を中心に大規模な観察研究や介入試験が行われた結果、牛乳・乳製品への不安を払拭する新たな証拠が続々と上がってきています。

つまり、「牛乳は動脈硬化の原因にならない」というだけでなく、日本人に多い脳卒中やその予備軍である高血圧、糖尿病に対しては「予防」にはたらき、心筋梗塞に対しても「中立的」かやや「予防」にはたらくことが強く示されたのです。

これらの報告は、現在最もエビデンスレベル(証拠性の強さ)が高いとされる「システマティック・レビュー」(複数の研究を総合的に解析したもの)によるもので、高い信頼性を有しています。

なお、動脈硬化は、カルシウム不足によっても進行します。

カルシウム不足が長く続くと、骨から溶け出したカルシウムが逆に増えすぎて、余った分が血管壁に沈着・石灰化して血管を硬くし、動脈硬化を促進するのです。

したがって、カルシウム不足を防ぐことは非常に重要です。

牛乳には、カルシウムはもちろん、高血圧の大敵・塩分(ナトリウム)を体外に排出するカリウムも豊富に含まれています。

また、牛乳たんぱく質のカゼインが消化される途中で生じるペプチド化合物の中には、血圧を抑制する作用のあるものも知られています。

このように、幾重ものガード機能がはたらく牛乳・乳製品は、血圧コントロール、動脈硬化予防に欠かせない食品なのです。

市販の牛乳を子牛が飲むと死ぬ

実際に市販牛乳を飲んだ子牛はすくすく育ちました。

牛乳が原因で子牛が死ぬ、ということはありえません。

ただし、ヒトは胎児期に母親から胎盤を通じて免疫たんぱく質を受け取ってから生まれてきますが、牛の場合は、免疫たんぱく質を受け取らないまま生まれてきます。

そのため分娩直後の「初乳」には免疫たんぱく質が多量に含まれており、子牛はその特別な乳を約1週間飲むことで免疫を得て抵抗力をつけ、感染症などから身を守ります。

したがって、子牛には必ず初乳を与える必要があります。

子牛に飲ませるため、出産後、最初の5日間の「初期初乳」は工場には出荷できない決まりになっています。

初乳を与えた後は、子牛に市販の牛乳を飲ませても健康にまったく害はありません。

実際に、市販の牛乳を母牛から授乳するのと同じように温めて飲ませる試験を行いましたが、子牛の健康にはまったく影響はありませんでした。

試験は、生後4~18日の子牛に市販牛乳を4~10日間、1日4L(2L×2回)与えるという内容です。
その間、健康状態に問題はなく、その後も順調に成育しました。

牛乳から作られる粉ミルクは人間の赤ちゃんにはあわない

粉ミルクは、成分を母乳に近づけた特定用途食品です。

まず、赤ちゃんにとって、母乳が最良の栄養であることはいうまでもないことです。

母乳は赤ちゃんに必要な栄養素をたくさん含み、その未成熟な消化管にも負担をかけません。

特に初乳には、赤ちゃんを病気などから守るためのさまざまな免疫成分も含まれています。

「乳児用調整粉乳」(粉ミルク)は、母乳が足りないときや与えられないときに、広く利用されています。

牛乳を原料にしていますが、単に牛乳を粉状にしたものではありません。

必要な栄養成分を置換・強化したり、過剰なものは減らすなど、組成をできるだけ母乳に近づけて作られています。

乳児用調整粉乳は、法律で組成が定められた「特別用途食品」です。

体の未発達な乳児にも安心して与えることができるよう、エネルギー、たんぱく質などそれぞれに定められた基準に適合しなければならず、申請の手続きも他の食品に比べ、特に厳しくなっています。

「日本人にあわない」に答える編

日本人は乳糖不耐症が多く、牛乳を飲むとおなかをこわす

「乳糖不耐」の人はそれほど多くなく、多くの人は飲み方の工夫で解決できます。

牛乳を飲むことで、おなかが張る、ゴロゴロする、下痢をするなどの不快症状が現れる「乳糖不耐」。

病気というわけではありません。

これまで乳糖不耐は、授乳期を過ぎて、乳糖の消化が不要となるに従って、乳糖を分解するための酵素であるラクターゼの発現が減少。

酵素活性が低下するために小腸において消化されなかった乳糖が大腸へ運ばれ、大腸内の悪玉菌に利用されて多量の酸やガスを発生し、それが腹痛や下痢につながると考えられてきました。

しかし、牛乳を飲んで不快症状の自覚を持つ人の割合は、15歳以上の男女10,000人を対象とした調査で、「いつもそうなる」5%、「いつでもではないがなる」11%、「たまになる」29%など、それほど高くないことが判明しています。

また、近年の研究で、大腸に善玉菌が多ければ乳糖は分解され、不快症状が出にくいことが明らかになってきました。

飲み方を工夫することで、多くの人は牛乳を摂ることができるようになります。

アトピーや花粉症が増えたのは、学校給食の牛乳が原因

アレルギーは、多様かつ複合的な要因によって発症します。

アレルギーとは、本来人間の体にとって有益な反応である免疫反応が、逆に体にとって好ましくない反応を引き起こすことをいいます。

代表的な疾患としては、気管支ぜん息、アトピー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎、アレルギー性結膜炎、花粉症、食物アレルギーなどがあり、いくつかのアレルギー疾患を合併する場合もあります。

アレルギーは、体質的な要因に加え、さまざまなアレルゲン(アレルギー症状を起こす物質)やストレスなどの環境的要因が複雑にからみ合って発症すると考えられています。

牛乳はアレルゲンの一つではありますが、アレルギーの発症そのものが学校給食の牛乳に起因するという主張には、科学的根拠はまったくありません。

牛乳にごはんはあわない。学校給食に必要ない

栄養や食育の視点も含めた議論を。

体の基礎がつくられる成長期の子どもの食生活は、きわめて重要です。

学校給食は、子どもの成長に必要な各栄養量の基準を国が設定し、栄養バランスを考えた食事を全国の学校で提供しています。

学校給食については、法律(学校給食法)によって児童・生徒の「健康の保持増進」「望ましい食習慣形成」などの目標に加え、食に関する指導での活用も定められており、児童・生徒への教育の一環として大きな役割を担っています。

その学校給食において、戦後の脱脂粉乳に始まり、昭和45年ごろから本格的に登場し、重要な役割を果たしてきたのが牛乳です。

カルシウムの供給源として

小児~青少年の発育期は、骨の形成・成長に最も重要な時期です。

骨格の成長が完了し、最大骨量に到達するこの時期に、より高い骨量を得て丈夫な骨をつくっておくことが、女性における閉経後の骨粗しょう症予防、また男女問わず高齢期の転倒・骨折予防まで見据えた、生涯にわたる骨の健康につながります。

ところが、多くの栄養素の摂取量が充足あるいは過剰になっている現在においても、カルシウムは日本人にとっていまだに不足しがちな栄養素です。

このため、文部科学省が定める「学校給食摂取基準」はカルシウムについて、1日に必要な摂取量の50%が学校給食で摂取できるよう設定しています。

他の栄養素は30%で提供されていることを考えれば、カルシウムの摂取が子どもたち、さらに現代日本人にとって重要な課題であることがよくわかります。

そのなかで牛乳は、含有量・吸収率ともすぐれたカルシウムの頼もしい供給源として取り入れられてきたのです。

実際、学校給食のある日とない日で昼食のカルシウムの摂取量を比べると、大きな差がありました。

さらに、給食のある日は小・中学校男女ともに推奨量に近い、または超える量のカルシウムを摂取できていたのに対し、ない日は全学年男女とも推奨量より低かったという結果も報告されています。

食育の価値ある教材として

学校給食で毎日飲む牛乳は、児童・生徒にとっては大変身近な食品です。

それだけに、学校での食育活動において、乳牛という生き物を通して「生命を尊重する精神」、乳牛を管理し給食で毎日提供するために年間を通してほぼ休みなく働く酪農家を通して「生産者に感謝する心」「勤労の精神」を育むための教材としても高く評価されています。

多様な献立の支え役として

給食は1食270円前後。

限られたコストや人材で、決められた栄養量の達成、給食時間までの確実な提供や安全性への配慮といった厳しい条件があるなかで、さらに児童・生徒に飽きさせないよう、毎日、バラエティに富んだ献立作成で提供することが求められています。

ある自治体では、市内の小中学校で米飯給食を推進するなかで牛乳提供を休止したところ、献立が固定化してしまうという課題に直面。

給食での牛乳提供の必要性が改めて再確認されました。

牛乳は、カルシウム以外にも、たんぱく質、ビタミン類、ミネラルなど、子どもの成長に必要な栄養素が豊富に含まれています。

給食献立に1本(200mL)の牛乳があることで、主食や主菜・副菜などの献立に自由度が広がるという、給食運営面での優位性が示される出来事でした。

以上のことを考え合わせると、個人的な嗜好やイメージで「ごはんに牛乳はあわない」「学校給食に必要ない」といった主観的な考え方を学校給食に押しつけることは、学校運営や子どもの成長に責任を持つ学校現場を困らせるばかりで、何の改善にもつながりません。

学校給食の目的、子どもたちの健康や教育、学校現場の実態を把握したうえで、客観的な視点で給食における牛乳の役割を評価し、総合的に判断していくことが望まれます。

「アンチミルク」に答える解説集 Jミルク より

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